Ich verliebte mich in Sie.

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第十一話 「おかえり」

 自宅を飛び出してすぐに雨が降ってきた。
 今更ながら私が自宅を飛び出す必要があったのかは分からない。
 だけど、今戻ってガルデルさんに会ってしまうのが怖かった。



「おかえり」





「ほら、ちゃんと髪拭かなきゃ。風邪ひいちゃうでしょう」
「…ごめんね、ありがとう」

結局行く当てのなかった私はロカールを頼った。
同じ区にガルデルさんの家もあるけど、たぶんここまでは来ない。
ずぶ濡れで、こんな夜に訪ねてきた私に、
ロカールはすごくびっくりしていたけれど、快く迎えてくれた。

「…リアベル、大丈夫?」
「うん…ううん。今はちょっと、いっぱいいっぱいかも」
「そう。事情は、私からは聞かない。ゆっくりしていきなさい」
「ありがとう」

ロカールは温かいお茶を入れてくれて、私の向かい側に座った。
私の状態を察してか、何があったか聞こうとしない彼女の心遣いが嬉しかった。
私はあたたかいお茶に口をつけて、そっと瞳を閉じた。



びっくりした。
最近少し様子が変だとは思ってた。僕を見て何か言いたそうな顔をするのに、
目が合うと口をつぐむキミ。いつか話してくれるだろうと、信じて待っていた。
日が暮れても待ち合わせ場所に来ないなんて、今までになかった。
だから何かあったんじゃないかと急いで家を訪ねれば、
泣きはらした赤い目で出てきたキミ。
“一人で泣かないで”って言ったのに。
僕の居ないところで泣いたんだって思ったら、
僕のキミへの想いが、置いていかれたような気がした。
そう思ったら距離を置こうなんて心にも無いことを口にしていた。
本当は、僕を愛していると言ってくれたキミを、
すぐにでも追いかけて抱きしめるべきだった。
けれど、君の口から飛び出した“パーシス”という名に驚いて、
キミを見失ってしまったんだ。
きっと友人のロカール・スルツカヤの家に行ったんだろう。
確か僕の家と同じ地区だったなぁ。
あの姉御肌気質のスルツカヤさんの事だ。
行ったところで彼女に会わせてはくれないだろう。
だから僕は待つことにしたんだ。キミの家で。



少し肌寒さを感じて私は目を覚ました。
どうやらテーブルに伏せて眠ってしまったらしい。
カーテンの隙間から少しだけ朝日が差していた。

「(まだ早い時間なんだ…ガルデルさん、どうしたかな…)」

結局あの後はロカールに事情を説明しなかった。
言えば彼女が飛び出していきそうな気がしたから。
あたりにロカールは居ない。寝室にいって寝ているのだろうか?
起こしてしまうのは忍びなくて、私はメモを残して帰ることにした。
さすがに朝早いためか、誰にも会わない。
ガルデルさんの家の近くを通るときは少し緊張した。
昨日のこと、謝ろうかと思ったけど時間も時間だし、今は諦めて帰ることにした。


家のドアを開けて私は自分の目を疑った。

「どう、して…」

そこには昨夜確かに距離を置こうと言ったはずのガルデルさんの姿があった。
私の帰りを待っていてくれたのだろうか?
テーブルに頬杖を着いて、舟をこいでいる。
私は彼を起こしてしまわないようにそっとそばに歩み寄った。
あのアイスブルーの瞳は閉じられていて私を映さない。
我慢しないでちゃんと言えば昨夜みたいなことにならなかったのかな?

「ごめん、なさい。ごめんな…さい」

突如こぼれた涙に私は驚いて、慌てて涙をぬぐった。
ぬぐってもぬぐっても涙がこぼれて、止まらなくて動揺していたら、
不意に腕を引かれて、私は彼の香りに包まれていた。

「ガルデルさ…」
「おかえり、リアベルちゃん」
「わ、私…昨夜はっ」
「昨夜はごめんね」

私を抱きしめるガルデルさんの手が温かくて、優しくて。
せっかく止まったはずの涙がまた溢れ出した。
そのたびに、ガルデルさんは優しく涙をぬぐってくれた。


「…パーシスっていうのはね、故郷においてきた年の離れた妹の名前なんだ」
「えっ…」
「遅くにできた子で、あの子が成人するまで両親が生きられるか分からないのに、
 僕はあの子も両親も置いて、移住してしまったから…」
「…移住したこと、後悔してるの?」

故郷の妹の話をする彼に、私は恐る恐る尋ねた。
後悔してるって言われたら、どうしよう?
後悔しているなら帰ったほうがいいかもしれない。
でも、私は…。

「後悔はしてないよ。キミに会えたから」
「あ…。ガルデルさん…」

私の好きな彼のアイスブルーの瞳は優しく微笑んで、私を映していた。

「ずっと一緒にいたいんだ。結婚しよう」
「とっても嬉しい…。私も、ずっと一緒にいたい」
「愛してる」

ガルデルさんは、私の頬に、額に、まぶたに、口付けた。


そして、私の唇にキスをした。


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