Ich verliebte mich in Sie.

2011年03月 ≪  12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ≫ 2011年04月
TOPスポンサー広告 ≫ 第十話 かみ合わない歯車TOPリアベル小説 ≫ 第十話 かみ合わない歯車

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 | Comments(-) | Trackbacks(-)

第十話 かみ合わない歯車

 私は、エルグには行かず、ひたすらティルグに通った。
 ガルデルさんにデートに誘われても断らない。
 けれど私は決まって夕方にしか待ち合わせ場所に行かなかった。
 そんな私にガルデルさんはいつも笑って「今来たところだよ」っていう。
 本当はその言葉が嘘だってこと、知っていたけど…。
 私は知らない振りをした。



かみ合わない歯車





あれから何度かお互いの家を行き来した。
ただ、私がガルデルさんの家に泊まることはあっても、その逆は一度もなかった。
ガルデルさんの家に泊まっても、何をするわけでもなく、二人で一緒に眠るだけ。
色っぽいことなど何一つなかった。彼の隣で眠って気づいたことがある。
時々、思い出したように何かにうなされるということ。
彼がうなされると私は背中に手を回して抱きしめる。
そしてそのたびに聞く「パーシス」という女性の名前。
ねぇ、私のこと好きだって言ったこと、信じても良いんだよね?


久しぶりにロカールが「お茶でもしない?」と声をかけてきた。
私はその誘いを受けたけど、場所は何故か私の家だった。

「だってうちじゃ娘がいるし、話がしにくいじゃない?
 リアベル、何か悩んでるでしょ?隠したって私にはわかるんだからね」
「あ…」

本当。なんでもお見通しなんだな。
ロカールの笑顔を見たら、今まで張り詰めていた糸が切れて、私はロカールに泣きついた。
泣いているからしどろもどろにしか説明できなかったけど、
彼女はしっかりと理解してくれたみたいで、時々相槌を打ちながら私の頭を撫でてくれた。

「パーシスって女性この国にはいないから、移住してくる前の国の人でしょうね」
「うん」
「気になるなら、ハーシェルさんに聞いちゃえば?」
「それができればいまこうして悩んでない」

泣いてひとまず落ち着いた私は、
すっかり冷えてしまったお茶を入れなおしてロカールの前においた。
そう、はっきりと本人に「パーシスって誰?」と聞いてしまうのが手っ取り早い解決法。
けれど、その名前が出るときは決まってガルデルさんがうなされているときだ。

「それに、思い出したくないことかもしれないし…」
「でもそうやって我慢して、リアベルばっかり辛いじゃない」

ロカールが小さくため息をついた。
ロカールの言うとおりだけど、
ガルデルさんが辛い思いをするくらいなら、私が辛い方がいい。
私が我慢すればそれでいい。そう言ったらロカールに頭を軽く叩かれた。


ロカールが私の家をでたのは夕方過ぎだった。
今日はガルデルさんと約束があったけど、
泣きはらして真っ赤になってしまった目を見せるわけにはいかなくて、
…初めてデートの約束を破った。
「ごめんなさい…」
言ったところで、ガルデルさんにこの言葉は届かないのだけど、
…言わずにはいられなかった。


日が暮れてから、ドアをノックする音が聞こえた。
こんな時間に誰だろう?
不思議に思いながらドアを開けた次の瞬間、私は誰かに抱きしめられた。
驚いて体を硬くしたのは一瞬で、すぐに相手がガルデルさんだと気づいた。

「ガルデル…さん?」
「心配したよ…。日が暮れてもキミが現れないから」
「ご、ごめんなさ…」
「それに」

ガルデルさんは私の体を離すと、今度は片手を頬に添えて顔を近づけてきた。
彼は真剣な顔で、いつものやさしい笑みはどこにもなく、少し怖かった。

「言ったよね、一人で泣かないでくれって…」
「あ…。あの、これはっ」

怖い。初めてガルデルさんを怖いと思った。
頬に触れていない方の彼の手は私の肩をつかんだまま、力がこもって痛い。
だけど、今の私を支配していたのは痛みよりも恐怖だった。

「僕はそんなに頼りない男かな?」
「ちっちがっ、そんなことない!」
「じゃあどうして一人で泣いたりしたの?」
「それは…」

言えない。ガルデルさんが傷つくからなんて、そんなの嘘。
ただ私が傷つきたくないだけだ。
私と「パーシス」という女性を重ねてみているんじゃないか?
…そう思ってしまう自分がイヤ。
ガルデルさんを信じたいのに心のどこかで疑っている私がいる…。

「…言えないんだね。答えはそれで十分だよ」

私に背を向け出て行こうとする彼の背に、とっさに抱きついた。
でも何を言っていいのかわからない。どうしたらいいのかわからない。
男の人と付き合ったことのない私に、
こういうときどうしたらいいのかなんてわかるはずがなかった。
そんな私の必死の行動も意味を成さなかったのか頭上から静かな声が降ってくる。

「離してくれないかな」
「っガルデルさっ」
「少し、距離を置こうか…」
「ど、どうしてそんなこと言うの!?」

振り返ったガルデルさんの、私の好きなアイスブルーの瞳が冷たく私を射抜く。

「僕はキミの信頼に足る男じゃなかった、そうじゃない?」
「違う違う違うっ!私は、私が好きなのは…愛しているのはアナタだけよ!」

私の中で、何かが切れたような気がした。
昼間、散々泣いたはずなのにまた涙が溢れた。
一度溢れた涙は止まらなくて、それと同時に私の感情も想いも溢れ出して止まらなくなった。

「私が初めて好きになったのはアナタ。
 初めてキスしたのだって、抱きしめて欲しいって、
 隣にいて欲しい、隣にいたいって思うのはアナタだけなの!
 ガルデルさんの方こそ、本当に私のこと好きなの?
 誰かとっ…“パーシス”さんと重ねているだけなんじゃないの!?」

そう、一気にまくし立ててガルデルさんの方に、
睨むように視線を向ければ酷く驚いた顔をしていた。
けれど、今の私には彼の言葉を信じられる自信がなくて、ただその場から逃げ出した。


スポンサーサイト

Comment













非公開コメントにする
Trackback

Trackback URL

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。