Ich verliebte mich in Sie.

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第七話 泣かないで

 結局一度もパンセントでは勝てなかった。
 帰り際に渡された一冊の本。
 彼のものだと思うとなんだかちょっぴりうれしくなった。



泣かないで





休日。私の目の前には二冊の本。
一冊はガルデルさんが貸してくれたパンセントの本。
もう一冊はロカールが置いていった恋愛小説。
本は好きだけど、今まで恋愛小説は読まなかった。
小さい頃童話は読んだけれど、女の子向けの童話はあまり好きにはなれなかった。

「いい?ちゃんと読むのよ?読んでよ?読んで嫌いだったらそれでいいから!」

本を置いていったときのロカールはそんなことを言っていた気がする。
まぁ、本に罪はないわけだし、読んでみるだけなら読んでみても良いかもしれない。
本当にベタな話というか。
ううん、私は恋愛小説なんて読んだことなかったから、
ベタなのかなんて分からないのだけれど。相手を想って、愛おしくなったり切なくなったり。
目があったり、触れあったりするとドキドキする。じゃあ、私は…。

「ガルデルさんに、恋…しているの?」

もし…もし私がガルデルさんに恋をしているとして、私はこれでいいのだろうか?
夢を叶える為に家族を、故郷を捨ててまで移住したのに…。
私は恋なんてしてていいのだろうか?
そんなことをしている暇があるのなら、夢を叶える為に訓練に行くべきじゃないだろうか?
そもそも、私がガルデルさんに恋をしたからといって、相手も同じ気持ちかなんて分からない。
慣れないことを考えたせいか、私の頭はパンクしそうだった。

「バスの浜にでも行こう」

気づいた想いに蓋をして、私は家を出た。


一日読書でつぶれたせいで、バスの浜に着いたときには、もう日が赤く沈みかけていた。
訓練するつもりで出てきたのに、なんとなく訓練する気にならなかった。
海水にぬれない位置に腰を落とし、一定のリズムを刻む波と沈む夕日を眺めた。
故郷の家族はどうしているだろうか?元気にやっているかな?
あの家族のことだ、元気にやっているに違いない。

「…ねぇ母さん。私本当にこれでよかったのかな?」

自分の人生を決められるのが嫌で国を飛び出した。

「私は…恋なんかして、いいのかな?」

男の人に色目で見られるのが嫌だった。
私自身を見ていない相手に嫁ぐなんて嫌だった。
家族のため、いつか嫁ぐ覚悟がなかったわけじゃない。
ただ、その覚悟より夢が勝っただけの話。
だから国を飛び出したのに…今の私は…。

初めは“女の子だから”って嫌いな言葉を使った人、だった。
だけど、後から私が過剰なだけで、普通の女の子はそれが嬉しいんだって気づいた。
次に会ったときは、夜だった。
泣きそうになってるときに現れるからびっくりしたっけ。
タオル越しに触れる手が温かくて、やさしくて。
酔ってつぶれて、挙句の果てに二日酔いになってお世話になって。
それでもやさしく笑ってくれて。
綺麗なアイスブルーの瞳からは、嫌な視線は感じない。
むしろ私はあのアイスブルーの瞳が好きだ。
時折見せる、たぶん心からの笑顔。あの笑顔が好きだ。私は。

「ガルデルさんが、好き…」

口にした瞬間、蓋をしたはずの心からも、瞳からも、想いが溢れて止まらなくなった。

「ガルデルさん…」



 たまには自分も訓練をしようと思って、
普段は行かないバスの浜に来てみたら、先約がいた。
だけど浜をダッシュしているわけでもなくただ、座っているだけのリアベルちゃんがいた。
後ろ姿を一目見ただけで分かるなんて、重症かもしれないな。
声をかけようとして、彼女の肩が震えていることに気づいた。
耳をすまさないと、波の音にかき消されてしまいそうな小さな嗚咽も聞こえた。
海で、泣かないで欲しい。怖くなるから。

「ガルデルさん…」

キミがいけないんだ。
キミは僕に気づいてなかったんだろうけど、僕の名前を呼ぶから。
だから僕は、キミを後ろから抱きしめた。キミが消えてしまわないように。



突然の出来事にびっくりして涙は止まったけど、思考も体も固まった。

「リアベルちゃん」

けれど、耳元でささやかれた低い声に私は安心した。
本当言えば突然の出来事で怖かった。
だけど相手が分かった今でも、まだ少しだけ怖かった。
名前を呼んだこと、聞こえてしまったかな?って…。

「ハーシェルさん?…どうしたんですか?」

私の首筋に顔をうずめているから、彼の表情は分からない。
心なしか、私を強く抱きしめている彼の手が震えているような気がした。
私が彼の手にそっと触れると、ビクッとなって、そっと私を離した。

「泣かないで。泣きたいときは、僕がそばにいてあげるから、一人で泣いたりしないで」
「ハーシェルさん…でも、迷惑」
「迷惑じゃない!…僕がキミのそばに居たいんだ。居て、欲しいんだ」

驚いた。いつも笑ってるガルデルさんが声を荒げるから。
でも、そばに居て欲しいってどういう意味、なのかな?
彼も私と同じ、気持ちなの?私がなんて言ったらいいのか分からないでいると、
ガルデルさんの大きな手が私の頬に触れてきた。

「ねぇ、もう一回、名前で呼んでくれないかな?」
「!!」

どうやら聞かれていたらしい。
恥ずかしくなって、顔が赤くなる。
この赤みは夕日のせいだと思いたい。無理な話だけど。
「ダメ、かな?」なんて寂しそうな目をするから、私は慌てて首を振った。

「キミのそばに居たい。キミの夢が叶うのを、一番そばで見届けたい」
「っ!ガルデル…さん」
「キミが好きだ、リアベル」

一方通行じゃなかった。この人は私自身を見てくれてる。
私の夢も私自身も受け入れてくれる。だから私は。

「私も、す…」

私の言葉は、ガルデルさんの唇で遮られた。
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