Ich verliebte mich in Sie.

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第六話 僕とキミ、私とアナタ

 もう二度と、恋なんてしないと思っていた。
 あの人はもういない。
 あの国は、僕にとって生き地獄みたいだった。



僕とキミ、私とアナタ





僕の家で夕飯の片づけをしている彼女の後ろ姿を、僕は頬杖をついて眺めていた。
たまたま市場で見つけて声をかけて、振り返った彼女がやんわりと微笑んだのにはびっくりした。
お酒を飲んで、酔いつぶれて、おまけに二日酔いになるという失態を僕の前で犯して。
それでもキミは僕に笑いかけてくれるんだね。
正直言うと、はじめはただ面白い子って興味を持っただけだった。
“女の子だから”と気遣われるのが嫌いな女の子。
だけど夜に水面に浮かぶキミを見て、綺麗だと思うと同時に急に怖くなったんだ。
僕の中にある“キズ”がうずいた気がした。
声をかけようとしたら起き上がって…今思えばあの時キミは泣いていたんだね。
いつも泣いていた、あの人も。だから泣いて欲しくなくて僕はキミを誘った。
わざわざ勘違いしそうな言葉を選んで。キミを試したんだ。
やっぱりキミは勘違いしたけれど、でもその気はないんだって分かった。
誰でもいいとか、ただの欲求のはけ口にとか、そんな軽い子じゃなかった。
むしろ、僕よりキミの方が今まで辛い思いをしてきたんじゃないかな?
お酒に酔って、頬を赤くして涙するキミ。

すごく、触れたくなった。

だけど泣いてるキミは触れたら消えてしまいそうで、触れられなかった。

「ハーシェルさん、コレなんですか?」

彼女の指さした先を見るとそこには移住の際に持ってきたパンセントがあった。
パンセントを見るとあの人を思い出す。けれどパンセントは嫌いにはなれなかった。

「それはパンセントだよ。異国ではチェスって言ったかな」
「これってボードゲームですよね、どうやるんですか?」

まさか彼女がパンセントに興味を持つとは思ってもみなかった。
僕は彼女をテーブルに着かせ、パンセントを持ってきた。
駒やルールの説明を聞いている彼女はなんだか楽しそうだ。

「うっ…負けました」

悔しそうにボードを見つめるキミをなんだか微笑ましく思った。
あぁ、だけどきっと彼女もそのうち飽きるんだろうな。
いや、もしかしたらキミなら飽きないかもしれないね。
…僕はキミに一体何を求めているんだろうね?
僕より弱いキミに。だけど僕より強いキミに。

「ハーシェルさん!もう一回、もう一回です!!」
「はいはい」

キミは意外と負けず嫌いなんだね。キミといると飽きないし楽しいよ。
ちょっとだけ、心が癒された、そんな気がする。
キミといると笑っている僕がいる。仮面をかぶった僕じゃない、素の僕が。
ねぇ、すごいことだと思わないかい?
お互いがたまたま移住してその移住した先が一緒で、たまたま市場近くでぶつかって、
たまたま僕がキミに興味を持って。たまたま、僕がキミを、欲しいと思った。
キミは“男”からの視線が嫌いだから、僕のこの想いを聞いたらどう思うんだろうね?
こいつもか。と思って離れていってしまうかな?それは、辛いなぁ。
ねぇ、キミはどうしたら僕に興味を持ってくれる?
どうしたら僕のモノになってくれるかな?

「あー、また負けたぁ!」

悔しさから頬を膨らますキミ。
気づいたらその頬に触れていた自分に驚いた。
触れたといっても人差し指でだけど。

「あ、の」

頬を赤く染めるキミ。ねぇ、それはどういう意味なのかな?
僕が触れたからって思ってもいいのかな?僕は、自惚れてもいいの?
なんて、口には出さないし、たぶんキミは異性に免疫がないんだろう?
だとしたら、少しだけ意識してくれたのかもしれない…ね。



食器を片づけてガルデルさんのところに戻ろうとしたら、
なんだか物思いにふけっているようだった。
何を考えているんだろう…。誰かを、想っているの?
なんとなく、なんて声をかけていいのか分からなくて、
目に付いたボードゲームを話しかける理由にした。

パンセント。

本当は知っていたけれど、知らないって、言ったほうが話しかけやすいなんて、
打算的な自分にちょっぴり嫌気が差した。そして話しかけてすぐに失敗したと思った。
パンセントを見た彼は少し悲しそうな顔をしたから。
だけどすぐに笑って一つ一つ丁寧に教えてくれた。

「(顔に張り付いた笑顔…)」

この笑顔は、好きじゃない。彼がたまに見せる笑顔が私は好きだ。
パンセントで勝負をしたけど、ガルデルさんは強かった。
私は強いほうではなかったけど、ガルデルさんはすごく強かった。
弱い振りなんてしなくたって勝てる気がしない。
だけど、私が負けて悔しがっているのを見て、アナタは笑うから。
私のすきな笑顔を見せてくれるから。時々、遊びに来ても良いかなって思う。
頬を膨らました私に、人差し指で触れてくるからびっくりした。
顔が赤くなっていくのを感じる。…私どうしちゃったんだろう。
男性に触られるなんて嫌悪以外の何物でもなかったというのに…。
あの夜、タオル越しに髪に触れられたときも、その翌日、二日酔いになったときも思った。


“ガルデルさんに触れられるのは嫌じゃない”って。


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