Ich verliebte mich in Sie.

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第三話 月明かりの夜に

 やっと手に入れた自由。
 誰にも邪魔させない。
 私は絶対、恋なんてしない。



月明かりの夜に





光の川辺で訓練していたら、あっという間に日が暮れて夜になり誰もいなくなっていた。
冷たい水が心地いい。私は仰向けで水の上に浮かびながら、空で輝く月を眺めていた。

「どこで見ても月は月、綺麗だな…」

夜空で一人輝く月。孤高の騎士みたい。
そろそろ帰ろう帰ろうと思うけれど、家に帰っても誰もいない。
そう思うとなかなか水の中からでられずにいた。
故郷は、私にとって生きづらかったけど、
それでも自分の生まれた国だし、大好きな家族もいた。
小さい頃の思い出だって辛いことばかりじゃなかったし、
家族と過ごした時間はやっぱり楽しかった。
気軽に友達なんて作ることのできなかった私を想って
いつも四人の兄達は一緒に遊んでくれた。
いつも一緒。だけど今は…

「ひとり…。やだ、なんで…」

故郷の家族に想いを馳せていたら涙がでてきた。
慌てて体を起こして涙をぬぐった。だけど、今ならここには誰もいない。
それなら泣いてもいいかなってちょっとだけ思った。

「ねぇ、帰らないの?」
「だっ誰!?」

不意にかけられた声にびっくりして私は振り返った。
まさかこんなに早く再会することになろうとは、思ってもみなかった。

「…ハーシェルさん」
「おや、僕の名前を知ってるんだ?」

ガルデルさ…ハーシェルさんはにっこりと微笑んで川辺の水面近くにたたずんでいる。
理由はわからないけれど、彼のやわらかい微笑みにちょっとだけホッとしてしまった。

「僕は、ガルデル・ハーシェル。キミの名前聞いてもいいかな?」
「リアベル。リアベル・ダルク」

“ブレット”という本来の苗字は、出国時に置いてきた。
おばあ様達の苗字は王族と同じだし名乗ることなんてできない。
そこで私はひいおばあ様の苗字を名乗ることにした。
故郷では名乗れる人は一人もいなくなったこの苗字を。

「リアベルちゃん。改めてよろしくね」
「よろしくおねがいします(…名前呼びだし)」
「ところで、そろそろあがらないと、暖かいとはいえ体が冷えちゃうよ」
「あ…がり、ます」

予想外の出来事にびっくりしていたが、指摘されれば確かに少し肌寒い気がした。
私が水からあがると、ハーシェルさんは何も言っていないのに、私に背を向けた。
待たせては悪いので急いで服を身につけた。何故彼が私を待つのか分からないんだけれど。

「…あの、お待たせしました」
「あぁうん。まだ髪がぬれてる、ちゃんと拭かないと風邪をひいてしまうよ」

ハーシェルさんは私の肩にかけていたタオルを手に取ると、私の髪を拭き始めた。
突然すぎだ。突然すぎる。私は頬に熱が集まっていくのを感じて少しだけうつむいた。
足元に視線を落として、近いなぁとか、髪に触れる手つきが優しいなぁとか、
考えていたら彼はタオルから手を離した。

「はい、終わり」
「あ、ありがとうござい…ます」

恥ずかしくて私は顔を上げることができなかった。
家族でもない異性が、
相手がその気になれば私を腕の中に閉じ込めてしまうことも可能な距離に居て、
さらには髪を拭かれたのだ。いたたまれない気持ちで居ると、
頭上から「ぷっ」と小さい笑い声が聞こえた気がして思わず顔を上げてしまった。
そこにはクスクスと、どこか楽しそうに笑っているハーシェルさんの姿があった。

「あの…ハーシェルさん?」
「あぁ、ごめん。ふふ、キミがかわいい反応するものだから」
「は?」
「ね、リアベルちゃん。付き合わない?」
「………はぁ!?」

一体何を言い出すのだこの男は!
まだ会ったのなんて二回目だし!
そもそも今の私は結婚だとかなんだとか、そういうことに関わりたくない。
そう言おうと思っていたのに目の前のこの男はまた楽しそうに笑っている。

「……からかったの?」
「僕はただ、“付き合わない?”って言っただけだよ」

彼の手には一本のリゼル・ココモ。
なんだか、この人には調子を狂わされてばっかりだ。
故郷への哀愁を晴らす為に
ちょっとくらい飲んでもいいかと思った私は、彼の申し出を受け入れた。



明日からまた仕事だ。仕事は嫌いじゃない。むしろ好きな方だからね。
せっかくの休日だったけれど、あの子には会えなかったなぁとか、少し残念だと思った。
仕方がないから帰ってお酒でも飲もうかと思ってリゼル・ココモを買って、
光の川辺の前を通りかかったとき、
月光に照らされて、水面に浮かぶ彼女がまるで水の精に見えた。
大げさかもしれないけど、本当にそう感じたんだ。
突然水から起き上がるから僕に気がついたのかと思ったけれど、
彼女は向こうを向いたまま。
手の動きからなんとなく、泣いているんじゃないかと思った。
だから、思わず声をかけてしまった。
泣いていないならそれでいい。
もし泣いているのなら…その涙を僕がぬぐってあげたいと、そう思ったんだ。

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